一人の耕作者が耕作する圃場が、地域のあちこちに散らばっている状態を「分散錯圃(ぶんさんさくほ)」といいます。担い手の耕地面積を広げる「集積」が進む一方で、分散錯圃を解消する「集約」は、そもそもどう測るかについての共通認識が十分ではありませんでした。
このページでは、水田の集約と集積の状況を数値で捉えるための指標と、その読み方・使い方をご紹介します。
集積は、担い手など一人ひとりの耕作者が耕作する面積を広げることです。集約は、耕作する圃場を散らばった状態からまとまった状態にすることです。
集約が進まないまま耕地面積だけが広がると、移動や作業の時間が増え、かえって集積そのものが頭打ちになることがあります。集積と集約は、両方をあわせて見ることが大切です。
距離の側面:圃場どうしが物理的に離れていることで、移動に時間がかかり、作業に使える時間が減ってしまう問題です。水管理などの見回り作業で特に問題になります。
団地化の側面:小さな団地や圃場で作業することで、刈り残しや機械の稼働ロスが増える問題です。耕起・田植え・収穫などの機械作業で特に問題になります。
地域によって、どちらの側面が課題になっているかは異なります。そのため、一つの指標だけでなく、複数の指標を組み合わせて見ることが重要です。
耕作者ごとに、耕作する圃場の平均的な中心地から、それぞれの圃場が平均してどれくらい離れて散らばっているかを示す指標です。
一定の距離内にあり隣接しているとみなせる同じ耕作者の圃場を「団地」とし、耕地面積を団地の数で割った値です。
自分の圃場がまとまっているエリアの中で、自分が耕作している農地が占める割合です。他の耕作者の農地が入り混じっていないほど、高い値になります。
耕作者ごとの耕地面積の平均です。集約の指標とあわせて見ることで、地域の農地構造を集約と集積の両面から確認できます。
※平均標準距離と平均耕地密度は、耕作規模が小さいほど良い値になりやすい性質があります(たとえば1筆だけを耕作する耕作者は、標準距離が0、耕地密度が100%になります)。小規模な耕作者が多い地域では、集積の指標である平均耕地面積もあわせてご確認ください。
複数の指標を組み合わせることで、「分散錯圃が距離の問題なのか、団地化の問題なのか、あるいは集積そのものの問題なのか」を、感覚ではなく数値に基づいて整理できます。
現状の把握:地域の課題が、どの指標に現れているかを確認します。
他地域との比較:同じ県内や全国の市町村と比べることで、地域の位置づけが分かります。
関係者との共有:指標を共通の言葉として、農業者・関係機関・財政部局などと、取り組みの優先順位を議論しやすくなります。
これらの指標を全国の市町村について比較できる「集約度ダッシュボード」を、東北学院大学 黒阪研究室が公開しています。都道府県・市町村を選ぶと、地域の指標を県内や全国と比べて確認できます。
ダッシュボードは、農研機構の農業データ連携基盤(WAGRI)の統合農地データを用いて作成されています。対象は、地目が田で、遊休農地ではない農地です。農地の位置情報(農地ピン)が整備されていない圃場は集計に含まれないため、整備状況によっては地域の農地全体を十分に代表しない場合があります。
当法人代表理事の小野寺直喜は、本ダッシュボードの研究に共同研究者として参画し、データの分析からサイトの構築まで全面的に携わっています。
ダッシュボードの指標と分析手法については、東北学院大学 黒阪健吾准教授との共著によるプレプリントを公開しています。
※プレプリントは査読を経ていない原稿です。
ダッシュボードは、地域の全体像を他の地域と比べるためのものです。お手元の農地台帳を使って、地区ごとの団地や集約化率を詳しく算定したい場合は農地集約化率算定ツールを、実際に農地の交換を調整して集約を進めたい場合は農地コネクトをご覧ください。